「あつい・・・・」




水浴び。




そう茹だる様に言って、はべったりとフロアに横になる。
近くにはいつものように賭博しているシロウとタイ・ホーの姿。
2人も同じ様に暑いはずだが、それでも楽しそうにサイコロを振っている。
「・・・・なんかムカツク・・・」
体を反らすように上半身だけ起こして肘を着いた。
「あ?何いってんだ、嬢ちゃん」
の唸りに首を傾げて、シロウが視線を向けてくる。
それに続くようにタイ・ホーも振り返って来た。
「暑さでおかしくなっちまったんじゃねぇか?」
くつくつと喉を鳴らして笑うタイ・ホーに、そのまま体をひねって蹴りを入れる。
「んなわけあるかい!」
「てぇ!お前わざわざ骨んとこ蹴るなよ!」
案外、力は弱くても後に引く痛みがあるもので。
タイ・ホーは蹴られた肩甲骨辺りを痛そうに押さえた。
そんな2人を可笑しそうに見ていたシロウが、あぐらをかき直す。
「んで?何がムカツクって?」
は気だるそうに体を起こすと、髪を掻き上げながら2人の傍に座った。
すると、暑いため上着を肌蹴ていたタイ・ホーの上半身を指差す。
「いいよね、男は裸になれてさ!」
むっと最上級に不機嫌な顔。
「はぁ?」
「だってだってさ!女って暑くたって脱げないわけよ!男はそれに比べていいじゃん!!」
じたばたとまるで駄々っ子のように両手を振りながら豪語する。
暫くぽかんとそんなを見ていた2人だったが、
カランとサイコロが忘れられたように音を立てた瞬間。
「ぶぁッはっはっはっは!!!!!」
弾けた様に馬鹿笑いをしだす柄の悪い2人組み。
逆に、今度はが呆けてしまう。
「てかそんなことで機嫌悪くなってたんか!」
「馬鹿だなー!!」
うっひゃっひゃっ!とまだ楽しそうに笑う野郎どもにむっかぁ!とは立ち上がった。
だんっ!と賭台の上に片足を乗せ、ぶんぶんと愛剣を鞘を抜いて振り回す
「あたしの怒りを笑うとはいい度胸してんじゃないか!!!そこになおれーー!!!」
「ぎゃー!!!お前まじであぶねぇ!!」
「つーかもう俺等なおってるし!!」
「やっかましいっ!!この悪党どもがぁぁ!!!」


「・・・何やってんだか、この人達は・・・」
入り口でヤム・クーが頭を抱えて呟いた。
中に入ろうと思えばこの現状。
たまらずため息が漏れる。
「あっ!ヤム・クー様!!様を止めてくださいよーー」
聞こえたのは近くのベットで休んでいたらしい水兵等の泣き言。
慣れない呼ばれ方をして、ヤム・クーは少し苦笑して答える。
「やっぱりこれってさんが原因ですか」
「ええ」
きっぱり言い放つ男に、あはは・・とヤム・クーは苦笑するしかない。
その間も、達は部屋の大半を使って大暴れしている。
「しょうがないですね・・まったく」
一度だけ前髪をかき上げて、ゆっくりと3人に歩み寄った。


「ふふふふ、覚悟しなー、クソ親父・・・」
がっしりと壁ぎわにタイ・ホーを追い詰めて、持っている剣を突きつける。
いくらタイ・ホーとはいえ丸腰でに適う自信は、はっきりいってなかった。
「お前目がマジだって!!てかシロウ助けやがれ!!」
「嫌だ!!」
「胸はって言うなーー!!」
もう半泣きなタイ・ホーが、大声で叫ぶ。
「覚悟ーー!!!」
ひゅっと軽く音を発てて、剣を振りかざした。
が。
「はい、そこまで」
ぐっと剣を持っていた手は押さえられ、タイ・ホーの鼻先擦れ擦れで止まる。
その隙にタイ・ホーは壁際から抜け出した。
「あ!!待てや!!こら!!!」
まだ追っかけようとするの腕を、ヤム・クーは後ろから押さえてしまう。
「ちょっとヤム!!邪魔しないでってば!!」
「邪魔しますって。アニキ達はともかく、他の人たちに迷惑ですよ」
「ともかくって、オマエ・・・」
そんなタイ・ホーの寂しそうなツッコミはとりあえず無視。
ふーふーっとまだ息が荒いを宥めながら自分のほうに向けた。
にっこりと前髪の間の瞳が優しく細まる。
それに、さすがのも肩の力を少しだけ抜いた。
「それで?何で怒ってたんですか?」
「それは、かくかくしかじかで・・・」


「・・・そんな事で怒ってたんですか」
はぁ、と心の底からのため息。
「そんな事って!!そりゃヤムは男だからわからんかも知れないけど!!」
ヤム・クーの様子にむっとしたは言い返した。
それに、もう安心かと傍に来たシロウがにやにやと笑う。
「譲ちゃんそこまで言うならさー、ぱぱっと脱いじまえばどうだ?」
明かに含みを持った言い方。
むっとはそんなシロウを振り返って鋭く睨みつける。
「シロウさん・・またさんに追っかけられたいんですか?」
うんざりと言った様子でヤム・クーが零した。
「う・・それは嫌かも・・」
「でしょ?」
あはは、と乾いた笑いがシロウの口から出る。
そんな様子にタイ・ホーはぐったりと元いた場所に腰かけた。
「ヤム、頼むからをどっか涼しい場所連れて行ってやってくれ。落ち着いて賭け事も出来ねぇ」
「そうですね、丁度俺さんに用があったんで」
今だシロウに飛び掛っていきそうなの両肩に、ぽんっと手を置く。
剥き出しだった牙を抑え、答えるように顔を上げた。
すると、再度返って来たのは穏やかな笑顔。
「さて、行きましょうかさん」




見上げた空にはもくもくとおいしそうな入道雲。
その間から照ってくるお日様はそれはもう元気が良かった。
「や・・・焼ける・・・・あつひ・・・」
はそんな夏日和にぐったりとその場に座り込んでしまう。
近くでは、ヤム・クーが腕を捲くってホースをもっていた。
「ほらさん。水撒きするんですから、羊さんたち端に寄せといてください」
「えーー・・ってかなんでヤムが牧場の水撒きなんかすんのさー」
今、2人がいるのは本拠地の端ある牧場の囲いの中。
もちろんそこにはユズが飼っている羊等がいるわけで。
の質問に、ヤム・クーは髪を後ろで一つに括りながら答える。
「ユズさんに頼まれたんですよ。なんでもスタリオンさんと買出しらしくて」
「あっそ・・つか仲良かったんだ、あの2人」
そういえばスタリオンはよくここで走り回っているが。
ぶつぶついいながらも羊達を手で押して一角に集めた。
それを確認すると、水道を捻りホースであたりに水を撒き始める。
日中の暑さのせいで少し弱っているように見えた草が青々と水を浴びていた。
そんな様子を羊の背に軽く乗りながら見ていただったが、あまりの暑さに太陽を睨む。
「あああ・・・暑いのに脱げないってつらい・・・」
汗で張り付く衣服がなんとも腹立たしい。
今ここで脱ぎ捨てられたらどれだけ気持ちがいいんだろう。
「よしよし、お前らも辛いよねぇ。クソ暑いのにこーんな毛皮着てなくちゃならないなんて。判るわぁ」
近くにいたタロウとジンギスカンの首根っこを抱いて、ぼやく。
羊たちは少しだけ迷惑そうに、メェ。
さん、羊さん達にまで絡んでどうするんですか・・」
水を撒きながら、そんなに苦笑する。
「ふんだふんだ。ヤムはいいよね、脱げるから」
拗ねたように羊達を巻き込んでそっぽ向く
思わず笑いが零れたが、どうやら聞こえなかったようだ。
水道のところに巻いていたホースを解いて、そーーっとの傍に歩み寄る。
その間もは羊たちに愚痴っているようだ。
それでもなんとか笑いはかみ殺して、その耳元にそっと囁く。
「涼しくしてあげましょうか?」
いきなり近くで聞こえたヤム・クーの声に、びくりと顔だけ振り返った。

シャアアアアアアッ。

「ぎゃーーーー!!!!」
ホースからシャワーのように冷たい水がの首元にかけられる。
その冷たさに思いっきり叫んだ。
近くにあったヤム・クーの顔は、心底楽しそうに笑っていて。
「何すんのさヤムー!!」
「ははっ、涼しくなったでしょう」
追っかけてくるから逃げながらも、またホースを向けてきた。
今度は全身に掛けられて、もうは完全にびちょ濡れ状態で。
「ふぬーー!負けん!」
は水道へ駆け寄ると、もう一本のホースを口に差し込んだ。
そのままコックを最大に広げ、思いっきりヤム・クーに向かって発射する。
「わーー!!俺は暑くないですってば!」
「わははは!!遠慮しないでってv」
そんな反撃に、ヤム・クーも焦りながらそれでも負けじと抵抗。
滴るほどお互い濡れ尽くしている。


水撒きはどこへやら。
もう水かけっこに集中しだしてしまった2人には、そんな言葉は何処にもない。
そんな2人がもう暑さを感じなくなった頃。
一瞬だけ、どちらかの水しぶきが空に虹を作って。
メェェ、とそれを伝えるように一度だけタロウが鳴いた。







end



夏のほのぼのドリー夢です。
いんや、これは書いてて楽しかった。
つーか暑いですからね・・・やりたいです水遊び。
何気にシロウ初登場ですな、影薄いですが(苦笑)
そしてメインキャスト!!タロウとジンギスカン!!(違)
タロウは出そうと思ってたんですが、メンチかジンギスカンで悩んだんですよ。
でも今ジンギスカン食べたくって・・・。
そんな感じで私のドリー夢は出来ていくんです(笑)



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