声が、聞こえる。


無力。



大広間に出ると、破壊された入り口に集まる仲間達が見えた。
剣を構えているビクトールの隣に駆け寄る。
「何があったの!?」
視線は今だ煙を立てている瓦礫に向けたまま問い掛けた。
「わからねぇ。いきなり入り口がこれだ」
返って来たのは舌打ち混じりの苛立った声。
ちらりとそんなビクトールを横目に、自分も大剣を鞘から抜いた。

風が強く吹き込んで、砂煙を晴らしていく。
ぱらぱらと、それによってまた何処か崩れたらしい。
ぽっかりと空いた入り口、そこには一人の長身の青年が瓦礫の上に立っていた。
皆各々の武器を構える。
そんな様子をぐるりと見渡して、にっこりと青年は微笑んだ。
白い短髪が、風に揺れる。

笑顔は崩さずに、ひらひらと石版の前で腕を組んでいるルックに手を振った。
「お久しぶりだね。レックナートは元気?」
ルックの形のよい眉が、きゅっとしかめられる。
「アンタ、なにしに来たわけ?はっきり言って迷惑なんだけど」
睨むルックと笑う青年。
仲間達はそんな二人を交互に見つめる。
「何、ルックの知り合いか?」
ビクトールが構えていた剣を少し降ろして問えば、返って来たのは鼻で笑うルックの声。
「冗談よしてよ、誰が。ただの」
「誰だろうと関係ない!こいつは本拠地を攻撃したんだからな!!」
ルックの言葉を遮り、青年に向かって駆け出したフリックに続いてマイクロトフ、カミューと攻撃を開始した。
三方から三人の剣が青年に向かって振り下ろされる。
青年は、そんな三人ににっこりと微笑みかけた。
羽織っていた黒いローブをひらりと翻す。
「ただの、同類だよ」





「っぅわあああ!!」



三人の剣が青年に当たるほんの直前。
いきなり三人は悲痛のうめき声を上げてその場に倒れてしまった。
その光景に、だけでなくその場にいた仲間全員が驚く。
ローブを元に戻し、フリックを見下ろした。

「て・・っめぇ、何しやがった・・っ」
喋るだけで全身を走る痛みに、フリックは顔を顰めながらも青年を睨みつける。
ルックがゆっくりとの隣に歩み寄ってきた。
青年は口元に笑顔を浮かべたまま、そんなルックを見つめる。


ふぉ・・。

ルックの周りを、円を描いて風が集まりだした。
まさか・・・と周りにいた仲間は冷たい汗を流す。
『我が真なる風の紋章よ・・・』
「っちょ!!!!ルック!!」
思わず隣にいたは、今まさに真の紋章を開放しようとしているルックに強く声をかけた。
それでも彼は詠唱を紡ぐことを止めようとしない。
は、その細い両肩を強く掴んだ。
「ルック!!ここで紋章使ったら危険だって!!誰かに何かあったらどうすんの!」
ぴく、とそれに笑顔が崩れた青年。
ルックもその言葉に一瞬顔を顰め、しょうがないといった様子で詠唱を止めた。
は、安堵のため息をつく。

っ!!」
少し離れた所からビクトールが自分を呼んで来る。
なんだと振り返れば、目の前にあるのは青年の笑顔で。
その吸い込まれそうな青い瞳に、思わず息を呑んだ。
「へぇ、君ちゃんって言うんだ」
穏やか過ぎて、怖い声色。
ぞくっとは背筋を震わせた。
「可愛いねー、気に入ったよ」
顎を掬われる。
は持っている剣に力を込めた。
「てめぇ!!に触んな!」
『無駄だビクトール』
今まさに駆け出そうとしたビクトールを止めたのはその手の中にある星辰剣。
「っ星辰剣!!邪魔すんな!!」
大声で言ってみても、星辰剣は従おうとしない。
その様子を見ていたルックは、深くため息をついた。
「そうだよ。アンタみたいな力馬鹿じゃ役立たずだ」
「なんでだよ!!」


視線の端でそんなやりとりをしている三人を見ながら、は青年を睨みつける。
返ってくるのは相変わらず緩んでいる整った顔。


「ねぇ、ちゃん」
「・・・」
「帰りたい場所、ってある?」
「・・帰りたい、場所?」
「そう。君は、何処に帰りたい?」



まるで、囁くように呟く澄んだ声はよく耳に届いた。
そして、半月型の唇が紡ぎだす言葉。

『我が真なる刻の紋章よ』
「な!!!」








帰りたい場所。
もし戻れれば、なんて、思ったことはあったけれど。








そう、願ったのは、あの頃の幸せ。








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おーい、ヤムが出てねぇぞーー!
あうう・・へぼい。
オリキャラを出すのは疲れます。
やっぱ5話くらいじゃ収まりませんね、きっと。
真の紋章持ってる彼はそうっすねー、見た目は22才くらいかな・・。
駄文失礼しました・・(涙)



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