ぱたぱたと草履を鳴らして船着場を出る。
中階段を上り、大広間にでれば、目に付いたのは5、6人の人だかり。
石盤の前にいるルックを通り過ぎて、そこに走り寄った。
すると、まずいといった様子でフリックがこちらを振り向く。
はぁ、と多少荒くなった息を整えて、汗を一度だけ拭った。
「・・どうしたんですか?」
そんなヤム・クーの台詞に、集まりの中心にいたビッキーがビクリと身を振るわせる。
「あ・・あの・・ちゃんが」



願。



ふわん、とした感じ。
それがおそらくベットの柔らかさだと気付く。
次に薄い瞼越しに感じた眩しさに、ゆっくりと目を覚ました。
以外にも寝起きの瞳にも優しい光が、頭をも覚ましていく。
そんな赤い光に照らされている天井は見覚えがなくて、がばっと起き上がった。
「っ!〜〜〜〜ぃってー・・・」
その途端忘れていた右肩の怪我が激痛を訴える。
暫くその痛みにじっと耐えていたが、多少収まってきたのでつぶっていた目を上げた。
そっとその部屋の中を見渡せば、明かに見覚えのない所。
「ニケ城・・ではないなこりゃ」
今自分が居るベットの他にも、高級そうなテーブルやその他の家具。
視線をめぐらせてそれが白い扉に辿り着いた時、ちょうどカチャリとそれが開いた。

「おや、目がさめましたか?」

ゆっくりと姿を表したのはこの怪我をさせた張本人。
思わず身構えるが、それを気にした様でもなく歩み寄ってくる。
カチャリと片手に持っていたトレイをベットサイドのテーブルに置いた。
「無駄ですよ。紋章は封じてますし、武器も没収させて頂きました」
はっと左手を見れば、確かに紋章の気配が感じられない。
ぎゅっと唇を噛んでクルガンを睨みつければ、にこりと笑顔が返って来た。
す、と腕を伸ばされて、怪我をしたそこに触れてくる。
「我が右手に宿る水の紋章よ。この者に癒しの一滴を」
クルガンの右手の紋章が光り、するりとそこから溢れ出た蒼い帯に腕が包まれた。
軽く傷口がひやりとした感じがして、気付けば痛みは流されるように治っている。
そんな意外な行動に、思わずキョトンとしていれば、クルガンが姿勢を正し、頭を下げてきた。
「いくら敵とはいえ、女性に此処までの大怪我をさせてしまい申し訳ありませんでした」
「は?」
いきなりの謝罪に、もう開いた口がふさがらない。
でもすぐに殺されることはなさそうな感じだ。
顔を上げて、無表情だがどこかまだ申し訳無さそうにしているクルガン。
は思わず少しだけ笑って、首を振った。
「別に謝ることじゃないっしょ。つーか敵に頭を下げるなんて、ハイランドの知将としていいの?」
ぐるぐると治った肩を回して調子を確かめながら問う。
多少違和感があるが、ほとんど全快しているようだ。
「私は将軍である前に男です。女性を敬うのは当然の所業と自負しておりますが?」
「へぇ、そりゃまたいい心がけですこと」
あれだな、多分マイクとかと気が合うんだろうな、この人。
がしがしと頭を掻いて、ため息を漏らした。
「それで、あたしは今何処にいてどういう状況なの?」
大体の見当はついていたが、一応確認。
撒き付けてあった自分の肩の包帯を解きつつ、クルガンが一度頷いた。
「ここはルルノイエの宮殿です。貴女は現在捕虜という形になっております」
やっぱし・・。
がくり、と力なく突っ伏す。
クルガン巻き取った包帯をトレイに置き、代わりに水差しを取った。
それをグラスに注ぐと、の前に差し出す。
「暫く貴女は無事でしょう。都市同盟の出方によるとは思いますが」
水を受け取り、口につける。
確かにそうだ。
しかしそれはシュウ達だって判っているので、安易なことはしないだろうが。
眉をひそめるに、クルガンは少し苦笑する。
「しかし、ここまで豪華な部屋を与えられる捕虜になれたのは流石殿というか」
「あ?っていうかそうだよね、普通牢屋とかー、それにまた綺麗な服着せてもらってるし」
今まで毛布に隠れて見えなかったが、どうやら自分が着ているものはやはり上等物のようだ。
手触りがいいが、どうもひらひらしてていつもと違和感がある。
クルガンはそんなの様子に、ニコと微笑んだ。
「それはハイランド1の作服士の物らしいですよ、ルカ様のご命令で貴女に」
「は!?ルカぁ!?」
「ええ、貴女をここに運ぶ途中にすれ違いまして、丁重に扱うようにと」
い・・意味わからん。
どうして敵国の王子が今まで一度も合ったことの無いあたしなんぞにそんなことを。
ってか、丁重に?な・・なんで?
色んな意味で動揺しているに、クルガンはそっと話し掛ける。
「きっと貴女の何か惹かれたのでしょう。良かったですね」
「・・・うわーい、うれしー」
ははは、と乾いた笑いを零しながらは両手で万歳した。
棒読みの台詞に、クルガンは笑いを零す。

「それでは私はこれで。そうそうもし調子が宜しいんでしたら宮殿内を散歩して見ては?」
「ってそれいいの?あたし一応捕虜なんでしょ?」
もう扱いが捕虜というより客人な所が、逆に怖い。
クルガンはドアのノブに手を掛けて、顔だけこちらを向いた。
「もちろん貴女程の使い手を一人にはしませんよ。暫くしたら腕の立つ案内の者を来させますのでご安心を」
軽く会釈しそういい残すと、ドアを開けて外に出て行ってしまう。
かちゃん、と同時に聞こえた外からの錠の音。
そりゃそうか・・いくらなんでもそんな甘くはないわな。
はぁ、とため息を付くと、はベットから降りた。





「それは本当なのか!!」
「多分〜〜。だって一瞬ルルノイエの景色が見えたんです〜〜」
激しい怒声に、ビッキーは半泣きで身を竦ませる。
チッと舌打ちをし、シュウは苛立った様に腕を組んだ。
それを聞いていたヤム・クーは、唇を気付かれないように噛む。
どくんどくんと心臓が鳴っている。
震える指先を、胸元でぎゅっと握った。
それに気づいたのか、隣にいたビクトールが宥めるように肩に手を置く。
「おい、なんとかをルルノイエから助け出せないのか?」
持っていた書類をうんざりと抱え直し、シュウがため息をついた。
「無茶を言うなビクトール。今はまだ潜入の時ではない、残念だが放って置くしかないな」
「っ!」
「おい!ヤム・クー!」
ビクトールの静止の声も聞かず、ヤム・クーはシュウの近くに歩み寄る。
伏せがちにシュウの顔を睨み付けた。
「・・・それはさんを見殺しにするってことですか」
いつもよりも断然低い声。
その殺気だった声に、睨まれている当人以外は身を怯ませた。
シュウは肩で息を付くと、垂れてきた髪を押さえながら睨み返す。
「そうだ、今は何も出来ん」
ハッキリとした言葉に、ヤム・クーはカッと怒りを高潮させた。
「てめぇ・・っ」
そんな高ぶりに素直に従い、シュウの頬を拳で打つ。
同時に周りに居た仲間からは黄色い声。
鋭く睨みつけても、殴られた頬を押さえるシュウは動揺もしていないようだ。
駆け寄ってきたアップルが、シュウにハンカチを渡す。
「待ってくださいヤム・クーさん。でも確かに今の状況では策がないんです!」
泣きそうな顔で見上げてくるアップルに、ヤム・クーは肩の力を無理矢理抜いた。
じんじんと痛む手の甲を押さえ、俯く。
「・・・・すいませんでした・・」
「いや、いい。当然だ」
何事も無かった様にシュウは乱れた髪を掻き揚げた。
ヤム・クーは申し訳無さそうに、苦笑する。

「あ!」

そんな静まった雰囲気を壊したのは、今回の事件の発端ビッキーだ。
皆が視線を集めると、小走りでいつも自分がいる場所へ走る。
「どうした?」
その行動の意図が掴めなくて、とりあえず目で追った。
すると、ビッキーは壁に掛けてあるまたたきの鏡に手を当てる。
「これ!!ちゃん確か瞬きの手鏡持ってた!きっと帰ってこれるよー!」
ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねてるその姿に、一同から安堵の息が零れた。
しかしそれに釘さす男が一人。
「・・・でもよ、それにしたって遅くねぇか?」
がテレポートしてから優に4時間は発っている状況だ。
ビクトールの唸りに、皆も固まる。
「・・・とりあえず、のことを待とう。それしかあるまい」
壁に寄りかかり、書類を見出したシュウの言葉に一同頷き。
ヤム・クーはゆっくりと瞬きの鏡に歩み寄ると、その硝子に手を当てた。
これの先にはがいる。
こつん、と額を当てると、祈るように目を閉じた。

「どうか、無事で・・・」









「・・?」
寝巻きを脱いで用意されていた服を着ていたは、呼ばれた気がして振り返った。
しかしそこにはボロボロになってしまった自分の服が置いてあるだけ。
眉を顰めただったが、ドアをノックする音でそれは掻き消される。
途中だった着替えを素早くすませ、はい、と答えた。
かちゃん、と鍵を開けて入って来たのは赤い髪の将軍シード。
「お、ほんとだ怪我もう良さそうだな」
「おかげさまでね。つーか何?捕虜の部屋にわざわざ」
近くに合った椅子に腰掛けて、シードを見上げた。
着慣れていないスカートは、すかすかして変な感じがする。
シードは笑って手を差し出してきた。
「クルガンから言われたろ?俺が散歩に連れてってやるよ」
・・・なるほど。
腕の立つ案内の者、とはこの男のことだったか。
確かに腕は立つ、というか立ち過ぎだっての。
ため息混じりに納得したは、差し出された手を無視して立ち上がった。
「ごくろう様。それは何?クルガンからの命令?」
髪を掻き揚げながら言えば、片目を細めてシードが笑う。
「違うね、俺が自分で希望したことだ。俺だって将軍の一人だぜ?忙しいんだけど」
「ふぅん、ならその忙しい将軍さんが、貴重な時間を割って捕虜のあたしに付き合ってくれると?」
わざと棘を含ませて言っても、シードは笑いを崩さない。
嫌な笑いではないので、はゆっくり見つめる。
シードは先程掴まれなかった腕を自分から掴んでの体を少し引き寄せる。
「あんた強いし、なんか面白そうだしな。わくわくすんだ」
にぱ、とまるでガキみたいな笑顔に、思わず呆気に取られてしまった。
実は髪の中に隠し持っていた小ナイフを、
掻き揚げる振りして手に取っていたのだが、それは黙ってまた元に戻す。

「・・・散歩、行くんでしょ?」

掴まれてた手をするりと払って、シードを通り過ぎると出口に向かった。
背中でシードが嬉しそうに笑う気配を感じて、溜まらずも微笑んでしまう。
ここはハイランドで、シードは敵なのに。

不思議だ。






「それで?ガイドさんは何処に連れてってくれるの?」
部屋を出て、広い廊下を二人で並び歩きながら問い掛ける。
所々にある綺麗な装飾をされた窓から溢れ出す夕日の光は優しい。
シードの髪はそんな夕焼けに照らされて、更に輝きを増していた。
「そうだな、同盟軍のアンタに見せても触りがないところかな」
その言葉に、自分が今敵国のど真ん中にいると再確認する。
一度気付かれないように軽く深呼吸した。
「・・・賢明じゃん。下手な所見せて、同盟軍にばらされたら困るんでしょ?」
「そりゃそうだ。アンタは口が軽そうだしな」
にやりと悪笑を浮かべるので、そっくり返してやる。
「アホ将軍に言われたくはないね」
「だーかーらー!アホって言うな!!」
立ち止まってムキになるシードに、はくすくすと笑いを零した。
しかし、ふと周りからくる視線に笑いを止める。
見渡せば、明かに怒気を自分に向けている何十人かのメイド。
何人かは、涙すら浮かべている。

はぁ〜ん、流石。ルックスはいいからねぇ、シード君。
大丈夫よシードファン倶楽部さん達、あたしはこんな上等なかっこしてても捕虜ですから。
ともかくアホ発言は控えよう・・。

シードはそれに気付かず、ぶつぶつと文句言いながら歩き出す。
そのまま立ち止まっていると、メイドの集中攻撃を受けそうなので駆け足でシードに寄った。
が。
ツンッ!と着なれていないロングスカートを踏んでしまい、前のめりに体が倒れる。
倒れ行く先にはシードの背中。

まずひ!!!
もし今この状況でシードに倒れ抱きつきなんぞをしたら、
あたしはルカよりもメイドさん達に殺られます!!

なんとか体をひねってこの際床にこけてやろうとする。
見るところ、ふかふか絨毯なので痛くは無いだろう。
「っ!」
だーのーにーーこの男は!!
ふと振り返ったかと思うと、素早く自分の体を抱き支えてくれる。
「っとー、平気か?」
シードは覗き込むようにの顔を見る。
その途端、きゃーーーー!!という絶叫が廊下に響き渡るのが聞こえた。

あ゛あ゛あ゛・・・。
アンタ馬鹿だよ、ほんと。
もうちょっとさー、こう自分の立場をわきまえてくれ。

とかなんとか悪態付きながら、さりげなくシードの腕を払った。
「平気、平気。悪いねシード君」
頭を掻いて笑えば、にっこりと笑顔が返って来る。
そんでまた絶叫。

もうなんだか頭が痛くなってきたは、がっくりとうなだれた。
それを不思議そうに見ていたシードだったが、はっと顔を上げる。
同時にも弾ける様にして垂れていた顔をめぐらせた。
2人が見つめる廊下には、奥に行くほど重圧感。
それはだんだんこちらへ迫ってきているのが判った。
こんな途方も無いプレッシャーを感じるのは初めてで、はぐっと息を呑む。

そして角を曲がって現れたのは白い甲冑を纏った男。
黒い髪を靡かせながら、こちらへ大股で歩み寄ってくる。
その姿が現れた途端、周りにいたメイドや召使は壁際に垂直に立ち直していた。
しかしそんな様子を窺っている場合ではない。
この男の威圧感は、只者ではなかった。
はたまらず一歩後退すると、シードの大きい手が背中を支えてくれたのがわかる。
甲冑の男がどんどん近づき、シードが視線で何かを訴えてくるが、それは読み取れなかった。
ぴた。
それはもう正確に、自分の前で止まる男の足。
鋭い視線が見下ろしてきて、は唇を強く結んだ。
シードが隣で深く礼をする。

「お早いお帰りで、ルカ様」

「ル!!!!」
カ、という言葉はなんとか押さえた。
しかし目の前にいるのがあのルカ=ブライトと知った途端、先程からの重圧感も激しくなる一方だ。
の声に一度だけ眉を動かしたルカはそれでも見下ろし続ける。
自分も緊張しているが、隣にいるシードからもそれは伝わってきた。
シードまでをもそうさせるとは、良かれ悪かれすごい力を持った人物なのだ、このルカという男は。
思わず強く睨み返せば、一文字だったその唇が、少しずつ緩んでいくのが見えた。
「くっ・・くく、なるほど、見定めたとおりのようだな」
軽く肩を震わせると、ルカは目を冷たく細める。
が眉を顰め訝しげな表情をしたその時、

「っ!!!」
シードの声がしたかと思うと、腰から抜いたルカの剣が自分に迫っていた。
いきなりのことに動揺しながらも、は後ろに体を回転させると腕の力で大きく跳ねる。
剣先が髪を掠り、壁際に攻められたがなんとか避けた。
だが。

ざんっ!!

鈍い音が耳元でして、目の前には驚くほどのスピードで踏み込んできたルカの顔。
その恐ろしい漆黒の瞳にゾクリとしながらも、横っ面の壁を貫いている剣を見る。
付けられていたイヤリングが砕かれて絨毯にぱらぱらと落ちた。
「その耳飾は似合わんな。ジルに後で見立ててもらえ」
響き渡るような低い声。
は恐怖に震えながらも、睨みつけた。
それをやけに楽しそうに笑うと、剣を抜いてルカは離れる。
ばさりとマントを翻して、背を向けると、顔だけで振り返ってきた。
「夜の会食、お前も出席しろ」
そうとだけ言い残すと、もう二度と振り返らずに歩みだしていく。
ずるずると壁伝いに座り込んでしまったは、震える口元を押さえた。
恐ろしい。
涙が出そうになるが、息を吸ってそれを堪える。
あれが、ルカ=ブライト・・・。

「おい!大丈夫か!?」
シードが座り込んでしまったの肩をつかむ。
呆然としてしまっていた意識が、ふと戻って見上げた。
「あ・・ああうん。びっくらしたけどね」
声が上ずっているのが自分でもわかる。
シードは眉を顰めて、辛そうに視線を伏せた。
「シード君?」
俯いてしまったシードを覗き込めば、なんだか泣きそうな顔。
手を伸ばそうとして、やめた。
どんな状況であれ、きっとここでの情けは後に引く。
は目一杯膝に力を入れて立ち上がった。
「ほらっ!ガイドがそんなんでどうすんのさ」
壁際を脱出して、俯いているシードの背に話し掛ける。
すると、苦笑したシードがこちらを振り向いてきた。
「アンタこそ、捕虜らしくしろよ少しはさ」
その声はもう元のシードの物で、何故か安堵してしまう。
にやりとは笑うと、腰に手を当ててふんぞり返った。
「なに言ってんのよ、十分してるじゃない」
「はっ!どこがだよクソ女」
「あ!!また言いやがったな!!」
笑いを口に乗せて、シードが歩き出した。
それにも続くが、少しだけ表情を曇らせる。

『夜の会食、お前も出席しろ』

どういうことなのだろうか。
それにあのルカが自分をどうやら気に掛けているようで。
わからない・・。







「おっほーー!綺麗ー!!」
感動の声をあげて、が柵に乗りかかる。
2人があちらこちらと宮殿の中を歩き回って、結局辿り着いたのはここだった。
ルルノイエをすべて見渡せる、宮殿最上階にある展望台。
吹きさらしなので、2人の髪を風が時折流した。
「だろー?俺もお気に入りなんだよな。それに夕日だったらアンタに見せても支障ないだろうし」
「あははそうだね、ざんねーん」
笑って見つめる町並みは、赤い夕焼けに照らされていてなんとも趣深い。
はルルノイエを超え、山並みすらも追い越したところに目を凝らした。
そんな視線に気付いたのか、シードが隣に並んで顔を覗き込む。
「帰りたいか?同盟軍に」
咎めるわけでもなく、ただ純粋に問い掛けてくる。
は顔を傾けて、その顔を見た。
「まぁね。あたしの居場所はあそこにあるから」
「・・・・」
見ることは出来ないけれど、はまた本拠地の方向へ視線を流す。
赤い世界はとても寂しくて、シードは柵に置いていた両腕に顎を置いた。

「・・・ルカ様に逢ってどう思った?」
「は?何いきなり」
シードの視線は真っ直ぐと町並みを見下ろしている。
そんな問いかけに、は瞳を閉じた。
「・・・そだね。怖かったよ、純粋に」
「そうか・・」
それ以上つっこまれもせず、シードは一言零しただけだった。
は不思議に思ったが、特に気にとめず景色を見直す。
隣でシードが大きく伸びをして、息を吐いた。
心地よい風が、2人を通り抜ける。


「綺麗だよな、この国は。俺は愛してる、ここを」
唐突にそんなことを言うシードに視線を流せば、ちょっと困ったような照れ笑顔。


「守りたいんだ、大切だから」


決意。
そんな風にには聞こえた。


「・・あたしだって守りたい大切なもんがある。でもそれは此処にじゃない。だから」
言葉を切ったに、シードは珍しく真摯な顔を浮かべた。
「だから?」
にっと歯をだしては笑うと、びしっとシードに人差し指を向ける。
「だから、あたし達は敵同士なんよ」
笑う場面ではないと、わかっていたけれど。
溜まらず笑い顔になってしまったシードは、隠すように髪を掻き揚げた。
「・・・なるほどな」


シードは笑いを苦笑に変換させ、ルルノイエをもう一度見渡した。
は遠い本拠地を。
お互いの視線はそれから決して絡まらず、
どこか寂しげな鴉の鳴き声だけが響いていた。







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長!!!つーかハイランダーの性格・・おかしいですよね・・。
特にクルガンさんが。
でもでも、絶対紳士っぽいじゃないですか、彼!
いくら戦いとはいえ、女子供を傷つけるのは嫌いであってほしいです(希望)
なんだかんだ言ってもシードとクルガンは悪い人ではないんで、
そんな所を出してみました。
でもあくまでハイランダーとさんは敵同士。
お互いその立場を判ってるんでしょうね。
そしてヤムがー!!ヤムが今回は怒ってますーー!(大騒ぎ)
それもシュウさんを殴るなんてあーた、度胸あるよ。




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